不動産

競売と任意売却の違いとは?どちらの方が高く売れるか解説

競売と任意売却の違いとは?どちらの方が高く売れるか解説

一般的に不動産を売却する場合には、不動産会社に不動産を買い取ってもらうか、不動産会社に不動産の買い手を見つけてもらうという方法のどちらかを選択して不動産を売却します。

しかし、不動産のローンが滞ってしまい、やむなく売却をしなければならなくなった場合には、競売と任意売却という2つの方法のうちどちらかの方法で不動産を売却しなければならない状態になってしまうケースがあります。

この競売と任意売却には、どのような違いがあるのでしょうか。

ここでは競売と任意売却の違いや、それぞれの売却方法の流れについて解説していきます。

競売と任意売却とは

競売と任意売却には、どのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、この2つの不動産の売却方法について解説していきます。

(1)競売

競売とは、その不動産を担保として金融機関などから融資を受けている場合に、返済が滞った時に、金融機関(債権者)が強制的に債権を回収する手段として活用される方法で、住宅ローンが滞った場合にも適用される方法です。

また住宅ローンの支払いが終了していても、マンションの修繕積立金を長期に渡り滞納しているなどの場合に、マンションの管理組合がマンションを競売手続きの対象とすることもあります。

競売は金融機関などの債権者の申し立てによって手続きが開始され、その後は裁判所の主導により進められるため、債権者は基本的に関与しないという特徴があります。

また競売を行うからといって、ローンの支払い義務が免除されることはありません。

競売の場合は、裁判所は所有者の同意を得なくても不動産を売却することを認め、所有者に代わって裁判所が不動産の購入者をオークションの形式で決定します。

競売で不動産の買い手が決まっても、その売却益は全額ローンの返済に充てられ、さらに残債が残る場合にはその後もローンの返済を行っていく必要があります。

「不動産を差し押さえられる」という点で競売と似ている不動産の売買方法に、「公売」というものがあります。

しかし、これは国税や地方税の滞納があった場合に、税金の回収を目的として国や地方公共団体の職員が不動産などの財産の差し押さえを行い、売却・換金を行うための手続きのことなので、住宅ローンなど金融機関からの借入とは全く関係がありません。

(2)任意売却

任意売却とは、住宅ローンなど不動産を担保とした借り入れを行っている場合に返済が難しくなった際に、融資を受けている金融機関の許可を得て不動産の売却を行う方法を言います。

任意売却は、略して「任売」と呼ばれることもあります。

一般的にローンが残っている不動産を売却する場合には、売却益や自己資金でローンを完済し抵当権を抹消してから不動産の手続きを行いますが、任意売却の場合には売却益などでローンを完済することができなくても抵当権を抹消してくれるということを債権者である金融機関などに了承してもらってから売却する方法を任意売却といいます。

任意売却で不動産を売却した場合に、売却益でローンなどの借入金を完済できない場合には、売却後も借入金が残ってしまうこともあります。

競売と任意売却のメリットとデメリット

競売と任意売却には、それぞれメリットとデメリットがあります。

ここでは、そのメリットとデメリットについて解説していきます。

(1)競売のメリットとデメリット

競売には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

①競売のメリット

競売は、任意売却に比べてメリットが少ない不動産の売却方法であるといえます。不動産ローンなどの借入金の返済が滞ってしまうと、担保となっている不動産を売却し借入金の返済に充てる必要が出てきます。

そのような場合に競売か任意売却のどちらかの方法をとって不動産を売却するのですが、競売によって不動産の売却を行う場合には、債務者が売却のためにすべきことは、ほとんどないため手間がかからないという点がメリットのひとつです。

また、競売の手続きは金融機関などの債権者や裁判所が手続きをすすめるため、債務者は「早く売却先を見つけないといけない」ということを気にしなくて済みます。

②競売のデメリット

競売の最も大きなデメリットは、不動産の売却価格が非常に低く、ほとんどの場合相場価格の6割から高くても8割程度の価格でしか売却できないということです。

そのため、競売で得ることができた売却益で借入金額を返済しても、まだ残債が多く残ってしまう可能性が非常に高くなります。

また、競売が行われた場合開札によって新しい所有者が決まった時点で、以前の所有者はそのままその物件に住み続けることはできなくなってしまい、早急に立ち退きをおこなう必要がでてきます。

もしそのまま居座り続けると、「強制執行」により強制的に退去させられてしまう可能性もあります。

(2)任意売却のメリットとデメリット

任意売却には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

①任意売却のメリット

任意売却のメリットには、金融機関などの債権者の許可を得ることができれば、一般的な不動産の売買と同様の方法で不動産を売却できるということです。

そのため、売却価格に債務者の希望を反映させることができ、競売で不動産を売却する場合よりも高い金額で売却することができるようになります。

このことにより、売却益を利用して借入額の残債を大きく減らすことができます。

また任意売却を行う際に、その物件が任意売却により売却される物件であるということを購入希望者に知られることもないため、大きく買いたたかれるということもありません。

それ以外にも任意売却を行った場合には、20万円から30万円程度の引っ越し費用を確保できる場合もあります。また、立ち退き(引っ越し)の時期を考慮してもらうことができるといったメリットがあります。

②任意売却のデメリット

任意売却のデメリットとしては、一般的な不動産の売却と同じ手順や手続きを行う必要があるため、競売に比べて手間がかかるということが挙げられます。

また最近では任意売却を専門とする不動産会社もありますが、その中には悪質な業者もあり、法外な仲介手数料を要求されるなどの被害に遭う可能性もあります。

3.任意売却ができないケースとは

任意売却を行うためには、ある期限があります。その期限とは入札の開札日の2日前までで、概ね住宅ローンを滞納してから13か月から16か月程度の期間です。

住宅ローンを滞納してしまっても、競売になってしまうまでに一年以上の期間があることから、もう少し頑張ってローンの滞納分の返済を完済できるよう努力しようと考える方もいらっしゃいます。ただ、多くのケースでは事態が良くなることは少ないようです。

そのためローンを滞納してしまった場合には、早めに任意売却の手続きを行ったほうが良いでしょう。

また、金融機関などの債権者からの承諾を得られない場合には、任意売却ができる期間であっても任意売却を行うことはできません。

競売と任意売却の流れ

ここでは、競売と任意売却の流れについて詳しく解説していきます。

(1)競売の流れ

競売の流れは、以下の通りです。

①金融機関からローンの一括返済を要求される

不動産を担保としたローンを滞納してしまうと、金融機関などの債権者からローンの一括返済を求められます。

分割払いを行う権利がはく奪されるため、一括返済を行うことを余儀なくされてしまいます。

②競売開始決定の通知が届く

ローンの一括返済ができなかった場合には、債権者が裁判所に対して競売の申し立てを行います。

裁判所がその内容を調査し、競売が妥当であると判断した場合には、競売開始の通知書が郵送されてきます。

③競売対象となった不動産の現状調査が行われる

競売は債務者からの申し立てのみによって開始されるため、不動産の状態の調査を競売が開始されてから調査員が行います。

これを現状調査といい、この調査によって不動産の売却価格を決める評価書が作成され、裁判所に提出されます。

その後債権者の同意が取れた時点で、入札が開始されます。

④入札通知が届き官報などで物件の情報が開示される

現状調査報告書などの必要書類が整ったら、債務者に対して裁判所から「期間入札の通知」が届きます。

この書類が届いた時点で、入札が開始されます。

⑤開札期日に落札者が決まる

期間入札の通知が手元に届いてから2か月から3か月後に、購入希望者による入札が開始されます。

その後、開札日に開札され落札者が決定します。

⑦落札者による売却代金納付後所有権移転

落札者が不動産の代金を支払い、登記の名義変更が行われて所有権が移転します。

⑧ローン残債の返済計画を立てる

競売を行った場合売却益のすべては債権者の手に渡るため、売却益と残債の差額をその後も返済していくことになります。

そのための計画を立てる必要がありますが、返済が不可能な場合には自己破産を行うことになります。

(2)任意売却の流れ

任意売却の流れは、以下のようなものになります。

①物件の売却額の査定とローン残債の確認

任意売却を行う不動産の売却額の査定と、ローンの残債の確認を行います。

不動産の売却額の査定は、一括査定を行うことができるサイトを利用すると、簡単に複数の不動産会社から査定を受けることができます。

ローン残高の確認は、ローンの借り入れを行っている金融機関のwebサイトや、金融機関から年に一回送付されてくるローン残高証明書で確認することができます。

②債権者に任意売却の許可をもらう

金融機関などの債権者に、任意査定の許可をもらいます。前述した任意売却ができる期間が長く残っているほど、任意売却の許可を得やすくなります。

このときに、連帯保証人がいる場合には連帯保証人の了承もとりつけておくようにしましょう。

③売却の開始

この先の任意売却の方法は、一般の不動産の売却方法と同じです。

不動産会社に不動産を購入してもらうか、買い手を探してもらうという方法で任意売却を進めていきます。

④売買契約を結ぶ

買い手が見つかれば、売買契約を結びます。

⑤決済と物件の引き渡し

決済と引き渡しは、売買契約締結の約1か月後に行うのが一般的です。

売却益はローンの残債の返済に充てられますが、債権者との交渉次第では数十万円の引っ越し代金を手元に残すことができるケースもあります。

⑥ローンが残ったら返済計画を立てる

売却益でローンの残債が全額返済できなかった場合には、残りの金額の返済計画を立てる必要があります。

ただし任意売却の場合には、無理のない範囲で返済計画を立てることも可能です。

まとめ

ここまで、競売と任意売却の違いとその流れについて解説してきました。

競売と比べて任意売却のほうが、物件を高額で売却できる可能性が高いなどのメリットが多いことがお分かりいただけたと思います。

しかし注意しなければいけないのが、「任意売却を行うことができる期間に定めがある」という点です。

任意売却を行っていても「開札」までに売却できない場合には、競売となってしまうため購入希望者が現れたら価格交渉などは柔軟に行い、早めに売却を済ませてしまうことをおすすめします。

※記事中の法律や税率などについては、2022年4月時点のものです。

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