不動産

不動産売却時にはどのくらいの税金がかかるの?節税方法と合わせて解説

不動産売却時にはどのくらいの税金がかかるの?節税方法と合わせて解説

不動産を売却した場合、その売却益にはいくつかの種類の税金がかかります。そのため、不動産を売却した金額のすべてが手元に残るわけではありません。

不動産を売却した利益を、なるべく多く手元に残す方法はないのでしょうか。

ここでは、不動産を売却した際に課せられる税金の種類や、利用できる控除などについて詳しく解説していきます。

また不動産を売却した場合には確定申告を行う必要があるため、その点についての解説も行っていきます。

不動産売却時にかかる税金

不動産を売却した場合に課せられる税金には、以下のようなものがあります。

(1)譲渡所得税

譲渡所得税とは、不動産を売却したときに利益が発生した場合にのみ課せられる税金のことを言います。

以下では、譲渡所得税について詳しく解説していきます。

①譲渡所得税とは

不動産を売却したときに発生した利益に対して課せられる税金のことを、譲渡所得税と言います。
譲渡所得税とは、住民税と復興特別所得税を含む所得税を合算したものを言います。

ちなみに復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興のための財源確保のための税金で、令和19年(1937年)まで納付する義務があります。

②譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税は不動産の売却金額ではなく、売却によって得られた利益に課せられる税金です。

そのため、売却額のうち不動産の取得費用や不動産会社に支払った仲介手数料などを経費として計上することができますので、住宅の売却にかかった費用の領収書は必ず取っておくようにしましょう。

また不動産の所有期間などによって受けられる控除もあり、譲渡所得税はこれらの経費や控除を売却額から差し引いた金額に課せられます。

譲渡所得税の計算式は、以下のとおりです。

不動産の売却額-(譲渡にかかった費用+不動産の取得にかかった費用)-(条件により適用される控除額)

③所有期間によって譲渡所得税の税額は変わる

譲渡所得税には短期譲渡所得税と長期譲渡所得税があり、売却した不動産を所有していた期間が5年未満か5年以上かという条件によって税率が大きく変わります。

この5年という所有期間は、不動産を売却した年の1月1日の時点で5年以上経過しているかどうかで判断します。

そのため所有期間が実質的に5年となっていても、売却を行った年の1月1日を過ぎていない場合には、短期譲渡所得税が課せられることになります。

短期譲渡所得の場合の税率は、住民税9%+(所得税30%+復興特別所得税0.63%)の計算式で求められ、39.63%となります。

長期譲渡所得の場合の税率は、住民税5%+(所得税15%+復興特別所得税0.315%)の計算式で求められ、20.315%となります。

この2つの計算式からわかるように、短期譲渡所得の場合は長期譲渡所得の場合と比較して2倍の税率の税金が課されることになります。

売却を行う時期が不動産の取得から5年前後の場合には、タイミングを見計らって不動産取得から5年後の1月1日以降に売却を行うことで、大幅な節税を行うことができます。

④マイホームを売却する際には特例が適用される

自宅として使用していたいわゆるマイホームを売却した際には、自宅を売却した際に発生した譲渡所得のうち最高で3,000万円までの控除を受けることができます。

この控除を3,000万円特別控除と呼び、売り主本人の居住用の不動産であること、譲渡先が直系親族や配偶者、同族会社ではないこと、前年と前々年にこの控除を利用していないことという条件を満たした場合に適用されます。

また、売却した物件を空き家にしていた場合でもその期間が3年を経過した日が属する年の年末までであれば、この控除を適用することができます。

(2)登録免許税

登録免許税とは、不動産が売却されることによって所有者が変わり、その際に不動産の登記上の所有者の名義が変更されるときに課される税金のことを言います。

登録免許税には不動産の売り主が負担するものと、買い主が負担するものがあります。

不動産の売り主が負担する登録免許税は、不動産の売却時にその不動産のローンが残っていた場合、抵当権を抹消する際に必要な登記費用です。

この抵当権の抹消登記は、不動産1件につき1,000円の登録免許税が必要となるので、土地と建物の抵当権を抹消する場合には、2件分の2,000円が必要となります。

この抹消手続きは司法書士に依頼することがほとんどなので、この手続きには登録免許税に手数料を加えた5,000円から20,000円程度かかります。

(3)印紙税

印紙税とは、不動産の売買に限らず商業取引に関連する契約書などの文書に対して課税される税金のことを言い、決められた金額の収入印紙を文書に張り付けるという方法で納税を行います。

不動産売却を行う際には、不動産の売却金額に応じた金額の収入印紙を売買契約書に貼付する必要があります。

平成26年4月1日から令和4年3月31までの間に作成される不動産譲渡の契約書に課される印紙税は、租税特別措置法により軽減措置が講じられています。

貼付する収入印紙の金額は、以下の表のとおりになります。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円を超え50万円以下のもの 400円 200円
50万円を超え100万円以下のもの 1千円 500円
100万円を超え500万円以下のもの 2千円 1千円
500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円
5千万円を超え1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

参考:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm

(4)消費税

不動産の売買を行う場合、売り手と買い手の双方が事業者ではなく個人として不動産取引を行った場合、不動産の売却額や売却益に消費税が課されることはありません。

不動産の売却を行う際に消費税を課されるのは、不動産会社に支払う仲介手数料、融資を受けていた場合に一括返済を行う際の手数料、抵当権抹消の登記を司法書士に依頼した場合の手数料の3つに対して消費税が課されます。

不動産売却時の節税に利用できる控除

ここまで不動産売却の際には、いくつかの種類の税金が不動産の売却益に課されることを解説してきました。

ここでは、この税金をなるべく低く抑えるために利用することができる控除について解説していきます。

(1)3,000万円特別控除

3,000万円特別控除は、売却する不動産の売り主が、その不動産をマイホームとして利用していた場合には、3,000万円まで所有期間の長短に関わらず控除を行うことができるというものです。

このとき売却する不動産が空き家になっていた場合でも、その期間がその不動産に住まなくなった日から3年経過する日の年の12月31日までに売却をおこなえば、この控除を利用できます。

また家屋部分を取り壊してから1年以内に土地の譲渡契約を結んだ場合にもこの控除は利用できます。ただし、その間に貸し駐車場など利益を得る目的で利用していた場合には、利用ができなくなるため、注意が必要です。

また、不動産を売却する相手が直系親族や配偶者、同族企業ではないことも条件となっています。

(2)相続不動産の所得費加算特例

相続または遺贈によって取得して不動産を売却する場合。

その譲渡のタイミングが、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日の以後3年経過する日までであった場合、取得費に相続税額を一定額加算して、譲渡所得に課される税金を軽減することができます。

(3)物件の所有期間が10年を超える場合は軽減税率

所有期間が10年を超えている不動産を売却する場合など、一定の条件を満たす場合には5年以上所有していた場合よりもさらに税率を低く抑えることができます。

長期譲渡所得といわれる5年以上所有していた不動産を売却する際の税率は、住民税5%+(所得税15%+復興特別所得税0.315%)の計算式で求められ、20.315%です。

5年以上と比べて、10年以上所有していた不動産を売却した場合の税率は、6,000万円以下の部分には住民税4%+(所得税10%+復興特別所得税0.21%)=14.21%。6,000万円以上の部分に関しては、住民税5%+(所得税15%+復興特別所得税0.315%)=20.315%となります。

そのため、6,000万円以下の部分の税率が5年以上10年未満所有していた不動産を売却する際と比較して税率が低くなり、課される税額も低くなります。

(4)相続した空き家(居住用)を売却した場合の特例

1人暮らしの被相続人である親の自宅を相続し、相続した時点でその不動産が空き家となっている場合、その空き家となっている不動産を売却する際に得られた譲渡益から3,000万円の控除を受けることができます。

この控除は、相続不動産の所得費加算特例と同時に利用することはできない点に注意が必要です。

(5)2009年~2010年に取得した土地等を2015年以降に譲渡した場合は1,000万円を控除

2009年から2010年の間に土地取得した土地などの不動産を5年以上保有した後に売却する場合。

その不動産が夫婦や親子など特別な間柄の者から取得した土地ではなく、遺贈、贈与、相続、交換、代物弁済および所有権転移外リース取引によって所得した不動産ではない場合に、1,000万円の控除を受けることができます。

不動産を売って損益が出た場合に使える特例

ここでは、不動産を売却して損益が出た場合に利用することができる特例について解説していきます。

(1)譲渡損失の繰り越し控除

不動産を売却した際の譲渡損益は、不動産の売却を行った年を含めて4年間他の所得と相殺することができ、その結果住民税や所得税を軽減させることができます。

これを、譲渡損益の繰り越し控除といいます。

(2)譲渡損失の損益通算

不動産を売却した場合に譲渡損失が出てしまったら、その損失の額を他の不動産の譲渡所得の額から控除することができる仕組みのことを言います。

これは短期譲渡所得の場合に適用される制度で、給与所得や事業所得と損益通算することはできません。

不動産を売却したら確定申告をしよう

不動産を売却し売却益が出た場合には、給与所得などからは分けて課税されるため確定申告を行う必要があります。

売却益が出ず、損失が出てしまった場合には確定申告を必ずしも確定申告を行う必要はありませんが、確定申告を行わないと損益通算などを行い節税ができないため、どのような場合でも不動産の売却を行ったら確定申告を行うようにしましょう。

確定申告に必要な書類

確定申告に必要な書類には、以下のようなものがあります。

(1)不動産売買契約書

売却した不動産を購入した際の売買契約書と、売却した際の売買契約書が必要になりますが、どちらも原本ではなくコピーで十分です。

(2)登記事項証明書

登記事項証明書は、売却した不動産を管轄する法務局か、オンライン請求システムを利用して入手できます。

(3)譲渡所得内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

譲渡所得内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)に必要事項を記入し、最後に所得金額と収入金額、分離課税の対象となる税額を確定申告書第三表(分離課税式)に記入します。

(4)確定申告書B

不動産を売却した際に確定申告を行う場合には、簡易版の確定申告書B様式を使用します。

(5)分離課税用の申告書

分離課税用の申告書は確定申告書第三表と呼ばれ、不動産を売却した際に確定申告を行う場合にはこの書類に記入をし、税務署に提出します。

(6)領収書

不動産会社に支払った仲介手数料など、不動産の売却にかかった経費の領収書も確定申告に必要になります。

まとめ

ここまで、不動産を売却した際に課せられる税金とその控除、そして確定申告の必要性と必要書類について解説していきました。

不動産を売却して利益が出た場合に、確定申告を行い各種の控除を上手に利用することで節税できることがお分かりいただけたと思います。

不動産を売却して損失が出た場合でも、確定申告で損益通算することによって事業所得や給与所得から損益を差し引き住民税や所得税を低く抑えることができますので、どのような場合でも不動産の売却を行った際は、必ず確定申告を行うようにしましょう。

※記事中の法律や税率などについては、2022年4月時点のものです。

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