不動産クラウドファンディングのproperty+は、2021年4月から運用開始したファンドです。
不動産投資の新しい手法として普及してきたクラウドファンディングに、魅力を感じる方も増えてきています。しかし投資には必ずリスクがあるため、安全な資産運用が可能なのか不安や疑問を抱く方も多いでしょう。
この記事では「property+」の口コミや評判などとファンドの特徴を分析し、有効な活用方法をお伝えします。
property+とは
property+(プロパティプラス)は、不動産特定共同事業法の許可を受けた事業者が運営する不動産投資を目的としたクラウドファンディングです。
ここでは、property+の概要などについて説明していきます。
(1)property+の概要
property+は一口1万円からの出資が可能で、少ない資金で不動産投資ができることから「誰でも大家さんになれる」プラットフォームと言えます。
運営する会社は、飯田グループホールディングス傘下の株式会社リビングコーポレーションです。飯田グループは、国内の住宅供給戸数ナンバー1を誇るハウスビルダーグループであり、リビングコーポレーションはグループ企業の一建設株式会社の関連子会社となります。
つまりproperty+は、飯田グループホールディングスの孫会社が運営しているクラウドファンディングということになります。
リビングコーポレーションは、アパート・マンション・ホテル開発や土地活用事業を展開しており、賃貸事業用物件のプロパティマネジメントも手がけています。不動産投資物件の開発から運営まで、ワンストップで行う総合不動産事業者と言っていいでしょう。
property+は同社が展開するマンション・アパート開発に関し、同社の資本に加え一般投資家の資金活用を図るスキームとして、不動産特定共同事業法にもとづいたクラウドファンディングを開発・組成しました。
property+に出資する投資家は、property+事業者と共に物件に出資し、物件の運用や売却により生まれた利益から配当を受取る仕組みになっています。
(2)4つのセーフティ対策
投資にはリスクがつきものですが、property+は投資家のリスクをできるだけ軽減するため、次の4つの仕組みを用意しています。
- 優先劣後出資
- マスターリース契約
- 強固なセキュリティ
- 信託銀行への分別管理
① 優先劣後出資
投資家からの出資は「優先出資」となり、事業者の出資は「劣後出資」とするのが「優先劣後」方式です。
万が一投資した資産が棄損し損害が生じた場合、劣後出資分から損害を補填し補填しきれない分について優先出資から補填します。したがって棄損額が劣後出資金額以内であれば、投資家には損害が及ばない仕組みになっています。
全出資額のうち劣後出資分の割合を「劣後割合」といい、劣後割合が高いほど投資家のリスクは少なくなります。
② マスターリース契約
賃貸住宅の運営は賃貸管理事業者に賃貸する「マスターリース契約」を締結し、リビングコーポレーションには毎月一定額の賃料収入が生まれます。賃貸管理会社は借上げした物件に入居者を募集し、転貸しますがこれを「サブリース」と言います。
マスターリース契約はたとえ空室となっても家賃収入が保証されるため、安定した賃貸事業を継続でき、出資者には予定した分配金の配当が可能となります。
③ 強固なセキュリティ
クラウドファンディングはインターネットによる取引であり、データベースやアプリケーションに対するサイバーセキュリティは極めて重要です。
property+に登録される個人情報は、金融情報システムセンターや国際ウェブセキュリティ標準機構が策定するガイドラインにもとづいたシステムに保管されるため、サイバー攻撃などのリスクが低減されます。
④ 信託銀行へ分別管理
投資家が出資する資金は、事業者の資金と区別して管理することが義務付けされています。
property+では普通銀行ではなく、より安全性の高い信託銀行の口座を活用しています。信託銀行は第三者によるチェックが行われるため、資金管理リスクが低減されるのです。
(3)リビングコーポレーションのアパート・マンション
リビングコーポレーションは自社が開発した「特許工法10-4CUBE」によりマンションを建設しており、property+ファンド商品はこの工法で建てられた物件です。
高さ制限のある地域において、通常であれば3階建てになる物件を4階建てにすることにより1フロア分が追加でき、家賃収入が増加するメリットがあります。
「特許工法10-4CUBE」は壁式鉄筋コンクリート構造と外壁のコンクリート打放しを特徴としており、高い耐震性能と維持メンテナンスコストの削減を図ることが可能な工法です。
自社物件・委託物件とも自社開発工法によるため、建物管理面において不測の修繕費支出による収益性の悪化は少なく、長期間にわたる賃貸経営のリスクを軽減できるとされています。
(4)アセット・インベストメント・パートナーとは
property+のプロジェクトには2種類あります。自社運用の物件と他社から委託を受けた物件です。
委託物件とは、株式会社アセット・インベストメント・パートナー(AIP社)が運用する投資物件のファンドをリビングコーポレーションがAIP社より委託を受けて投資家を募集するものです。
この方式で投資家を募集する事業を、不動産特定共同事業法では「第2号事業」として位置づけており、リビングコーポレーションは「第2号事業者」としての許可も保有しています。
他社からの委託物件とはいえ、AIP社の物件はリビングコーポレーションの「特許工法10-4CUBE」を採用したものであり、ファンドの協業に加えAIP社の物件開発部門の一部をリビングコーポレーションが担っています。
ファンドの安全性を評価する場合は、リビングコーポレーションはあくまでも「媒介」の立場で募集をしていますので、投資対象プロジェクトはAIP社の物件であることを意識して検討する必要があります。
AIP社は、投資用マンション開発事業を行う株式会社アセットリードのグループ会社です。アセットリードは、2000年3月に不動産売買・仲介・賃貸管理を目的として設立した会社です。
2002年には自社の新築分譲物件第一弾となる「アイディ西小山」を販売し、以後事業を拡大し、2005年には資本金を1億円に増資し「プリヴィレージュ」シリーズの販売を開始しました。
その後、株式会社アセットナビ、株式会社アセット建設、株式会社アセットコミュニティとグループ会社を設立し、2014年に株式会社アセット・インベストメント・パートナーを設立し現在のグループを形成しています。
(5)property+の評判は?
property+の第1号ファンドは「Branche阿佐ヶ谷ファンド1」、2021年6月8日からの募集開始でした。つまり事業スタートから1年というまだ新しいファンドになります。
一方運営するリビングコーポレーションが投資用収益物件の開発事業を開始したのは2016年2月のことでありまだ歴史は浅いと言えます。
投資物件提供企業としての評判を確認したい場合、リビングコーポレーションの口コミを参考にすると良いでしょう。
同社のウェブサイトに掲載されている「アパートオーナーからの声」の中から、いくつかピックアップしてみました。
- 他社と比較して利回りや月の収入がよかった
- 入居率のよさに期待がもてた
- 家賃の下落がすくなく建物のトラブルもなく信頼できた
- 営業担当が迅速で誠実
- 提案まで早かった
- ビジネスパートナーとして安心できた
上記の口コミから見ると、実物の投資物件を開発しオーナーに提供する事業では評判がよいようです。
立地選定や物件の企画などは、クラウドファンディング事業においても本質的に変わるものではありません。
実物投資事業では1物件1オーナーであったものが、クラウドファンディング事業では1物件に多数のオーナーとなりますが、事業者としてのリビングコーポレーションのスタンスは同じと考えられます。
これまで同様property+も、良質な投資物件を提供しつづけることでしょう。
property+を徹底分析
投資を開始する前にまずproperty+の特徴をしっかり把握することが大切です。
利用の手順やファンド商品の内容、メリットやデメリットについても整理しておく必要があります。
(1)property+の利用方法
property+の利用の流れは、以下のようになります。
- 会員登録と専用口座開設
- 投資資金を専用口座に入金
- ファンド選択と申込
- 運用開始
- 運用終了と配当金の受取
会員登録は「仮登録」→「本登録」→「本人確認書類」の3つのステップで行います。
仮登録と本登録は即日で完了しますが、そのご本人確認書類の提出を行い審査があります。審査には日数がかかりスマートフォンによる本人確認の場合は1~3営業日、郵便受取りによる場合は3~5営業日かかります。
スマートフォンによる本人確認は、外部サービスの「proost(プルースト)」を利用しています。同サービスを利用するには、運転免許証、マイナンバーカード、在留カードのいずれか1点が必要です。
本登録の最後には配当金を受取る銀行口座を登録しますので、預金通帳やキャッシュカードを用意しておくようにしましょう。
(2)ファンド一覧と特徴
2022年6月5日時点のファンド一覧は以下のとおりです。(運用終了プロジェクトは除いています。出典:https://propertyplus.jp/investment/fund_list.html)
プロジェクト名 | 区分 | 募集金額(万円) | 想定利回り | 運用期間 | 劣後割合 | ステータス | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Branche桜山Ⅲファンド8 | 委託商品 | 3,227 | 3.4% | 14か月 | 4.0% | 募集中 | 特許工法 10-4CUBE |
quador中野ファンド4 | 委託商品 | 16,780 | 3.2% | 16か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
quador中野ファンド3 | 委託商品 | 11,980 | 3.2% | 14か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
quador中野ファンド2 | 委託商品 | 4,620 | 3.2% | 14か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
quador中野ファンド1 | 委託商品 | 9,180 | 3.2% | 14か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
Branche桜山Ⅲファンド7 | 委託商品 | 10,440 | 3.5% | 12か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
Branche桜山Ⅲファンド6 | 委託商品 | 8,410 | 3.5% | 12か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
Branche桜山Ⅲファンド5 | 委託商品 | 3,060 | 3.5% | 12か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
Branche桜山Ⅲファンド4 | 委託商品 | 5,220 | 3.5% | 12か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
Branche桜山Ⅲファンド3 | 委託商品 | 23,405 | 3.5% | 12か月 | 4.0% | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE |
Branche桜山Ⅲファンド2 | 委託商品 | 4,930 | 3.5% | 12か月 | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE | |
Branche桜山Ⅲファンド1 | 委託商品 | 1,540 | 3.5% | 12か月 | 運用中 | 特許工法 10-4CUBE | |
quador中野ファンド5 | 委託商品 | 9,170 | 3.2% | 14か月 | 4.0% | 成立 | 特許工法 10-4CUBE |
すべてアセット・インベストメント・パートナーからの委託商品です。投資申込みできるのは「募集中」のファンドになります。
プロジェクト名でわかるとおり、物件は「quador中野」と「Branche桜山Ⅲ」の2つです。
利回りは3.2%~3.5%と平均的な水準ですが、特許工法 10-4CUBEによるproperty+の典型的な物件です。
なおリビングコーポレーションの自社商品は現在(2022年6月)運用が終了していますが、利回りキャンペーンファンドとして想定利回り10%(通常想定利回り3.3%)で募集をしていました。また劣後割合が69%という高い水準のファンドでした。
(3)property+のメリット・デメリット
property+が販売するファンドのメリットを一言で表現すると、「わかりやすい」投資商品です。区分所有賃貸マンションの1室~数室を対象としており、立地条件などは悪くなく新築もしくは築浅の物件であり満室経営が可能な物件と言えるでしょう。
ただしクラウドファンディング開始からまだ1年であり、今後も同様の特徴が維持されるかどうかはまだわかりません。実績が少ない点がデメリットと言えそうです。
property+はリビングコーポレーションの投資物件開発戦略の一環であり、開発資金の調達方法としてクラウドファンディングも活用しているようです。
これまで成立・運用終了が9ファンド、運用中と募集中ファンドが12と合計21ファンドのうち自社商品は7ファンドでした。
投資家にとってのproperty+のメリットは、自社ファンドのほうであり、今後自社物件の開発が期待されると言えるでしょう。
property+の活用法
不動産投資は、投資対象の特徴にもとづいた活用法を考えなければなりません。property+は「居住系」不動産に特化したファンドです。またインカムゲインを主体としているため投資スタンスも合わせる必要があります。
(1)居住系特化ファンド
アパート・マンションの住宅系に特化したクラウドファンディングがproperty+の特徴です。
不動産投資の対象には次の種類があります。
- 住宅系
- オフィス系
- 商業施設系
- 流通施設系
- 工場系
- ホテル系
コロナ禍においては2020年以降、オフィス系やホテル系は魅力が薄れていましたが、ウィズコロナ・アフターコロナを見すえて、今後はすべてのジャンルに関心を持つ必要があるかもしれません。
しかしそのなかでも住宅系は大きな需要変化がなく、安定した投資が可能と言えます。property+の現在のファンド一覧をみると、同一物件のファンドが多くあり、投資検討の時点であまり時間をかけず購入決断ができるでしょう。
物件に対する理解度も高くなるので、リスクに対しても正確な判断をすることができます。
(2)劣後割合に注目
ファンド一覧からは劣後割合の低いことがわかります。しかし劣後割合は元本棄損に対するものであり、property+はインカムゲインが主体のファンドです。
予想利回りにキャピタルゲインは含んでおらず、築浅の物件が主体のため家賃下落リスクも小さいと考えられます。
4階建ての壁式RC構造は大地震における被害想定も大きくなく、家賃が未収になってしまうリスクも大きくありません。
そのため元本棄損のおそれは少なく、劣後割合の低さはあまり問題にならないと考えられます。
(3)大家さんから投資家へ
リビングコーポレーションがクラウドファンディングを導入した意図は、大家さんやオーナーをみつけるのではなく、小口の投資家を集める方法への転換です。
1つの物件を1人のオーナーが所有し賃貸運用を行うことと、多数の小口投資家が集まって賃貸資産に投資することの違いは次のように整理できます。
事業者にとっては、
- 金融機関の融資審査が不要
- 抵当権設定が不要
などのメリットがあります。
一方投資家にとっては、
- 自己資金投資なので金融機関の融資審査が不要
- 小口なので投資がしやすい
- 複数の投資家が集まるのでリスク分割できる
などのメリットがあり、共通するのは金融機関の審査が不要な点です。
そして投資家にとってはリスクを多数の投資家で分割できるため、リスクが取りやすく投資が手軽にできると言えます。
長期間の賃貸経営をつづけるのではなく、複数の物件に投資し短期間の運用をくり返すほうがリスクは少なく済みます。
借金をかかえる必要のないクラウドファンディングは、今後の投資手法として定着していくことが予想されます。
まとめ
ここまで、不動産クラウドファンディングproperty+の特徴やメリット・デメリット、運営するリビングコーポレーションの口コミなどから、property+が販売する投資商品の特徴をみてきました。
property+の予想利回りは標準的で、手堅い賃貸投資商品という印象です。投資対象の実物マンションはリビングコーポレーション独自の特許工法によるものであり、自然災害リスクを軽減し予想される賃料収入の大幅な下落は少ないと考えられます。
運営会社が飯田グループHD傘下であることも安心感があり、手堅い不動産投資には適したクラウドファンディングと評価できると思います。
※記事中の法律や税率などについては、2022年6月時点のものです。