不動産

土地価格相場はどうやって決まる?計算方法や値段の決め方を解説

土地価格相場はどうやって決まる?計算方法や値段の決め方を解説

土地を売却する際には不動産会社へ査定依頼をすることになりますが、自分で正確な査定額を出す方法はないのかと思われる方もいらっしゃるでしょう。あらかじめおおよその査定価格を知った上で販売額を設定することができれば、土地売却のイメージがつきやすくなります。
土地価格相場の決まり方や計算方法が分かれば、不動産会社に頼らずとも査定額を算出することができ、売却依頼をする際に提示される額が妥当かどうかを確認することが可能です。

この記事では土地価格相場がどのようにして決まっているのかを解説し、自分で査定額を計算するためのポイントを紹介します。

土地の相場価格は知っておいた方がいい?

結論から言うと、土地の相場価格を知っておくことに損はありません。土地を売却する予定がなかったとしても、資産価値を把握しておくことは非常に重要です。
預金高の増減は目に見えて分かりますが、土地の価値増減は数年かけて変化する上にあまり目にすることがありません。
そのため意識をしない方も多いと思いますが、数十万円単位で変化していることもあります。
つまり、資産管理をする上では日々の支出や収入をチェックするのと同じくらい、保有している土地の資産確認が必要ということになります。

では、土地相場の変化はどのようにして確認するのでしょうか?
インターネットには不動産の物件情報が多く掲載されており、所有している土地の周辺に関する物件情報も確認することができるかと思います。
しかし、同じエリアで大きさも同じ物件であっても価格が大きく違うことがあります。
通常、時計や車の売買は同じ条件であれば価格は同じになりますが、不動産は同じになることの方が珍しいです。
これには土地の査定額が決定されるためのベースとなる指標と査定額、実際に販売される額が全て違うことが原因とされています。
また、土地や売主固有の要因が販売額に反映されるケースもあります。

ここからは指標となる価格、販売額の決めかた、相場の作られ方について解説します。

土地価格には4つある?

土地の価格を決めるための指標は4つあります。
それぞれの指標には利用するための役割があり、不動産の査定額を算出する場合はそれぞれを組み合わせて行います。
各土地価格のポイントは次の通りです。

(1)固定資産評価額

固定資産税を計算する上でのベースとなる評価額です。
3年に1度見直される評価額となっており、各市町村が算出しています。後述する公示価格の約7割に設定される額となっており、比較的安価になる傾向があります。

一番簡単に確認する方法は、毎年交付される固定資産税の納税通知書です。「価格」という欄に記載されている額が、固定資産評価額になります。
土地の所有者が毎年支払う納税額は、固定資産評価額×1.4%で算出されます。
また、市街化区域内に土地を持っている人はこれに加え都市計画税も支払う必要があり、固定資産評価額×0.3%で算出されます。

土地価格を知る上で一番身近な指標となるため、不動産の査定額でも使用することが多いです。

(2)路線価

国税庁のHPに路線価があります。毎年1月1日の価格を不動産鑑定士が評価し、算出します。
主に相続税や贈与税の算出をする場合に使用します。また、固定資産評価額のベースとして用いられることもあります。
固定資産評価額は公示価格の約7割に設定されますが、路線価は約8割に設定されるという特徴があります。

路線価の算出方法は国税庁のHPから確認できます。
該当するエリアを検索すると道路に価格が表示されています。例えば「42E」と記載があれば、道路に接道する土地は1㎡あたり42,000円ということになります。
土地が120㎡だった場合は5,040,000円が路線価となり、相続税や贈与税はこの評価額を基準して計算することになります。
数字の横にあるアルファベットは借地権割合と呼ばれており、借地は通常よりも評価額が安くなるためその割合を表示しています。
割合はHPの右上に記載されており、E50%となっていれば50%の評価額で計算されます。

(3)公示価格

客観的な土地価格を算出するための価格となっており、毎年1月1日時点の評価額を不動産鑑定士が計算し、国土交通省が発表しています。
前述した通り、固定資産評価額や路線価は公示価格の何割になるという設定になっているため、全ての基準となる価格となります。

公示価格は土地の形状や利用用途、エリアの状況や道路の方位など様々な要因を盛り込んで計算されているため、不動産の査定額を算出する場合にもこの価格を用いることが多く、利用度が高い指標といえます。
ただし、評価地点が近くにない場合は固定資産評価額や路線価を用いて計算することが多いです。

公示価格は全国地価マップで調べることができますので、計算する場合はこちらのサイトを利用してみましょう。

(4)実勢価格

実際に売買が成立した価格です。机上の計算ではなく、所有している土地のエリアで売却成立した額がどのくらいだったのかを調べることができる指標となります。
前述した公示価格に対し約1.2倍程度になることが多いという特徴がありますが、実際の売買された面積や町名を知りたい場合は土地総合情報システム(https://www.land.mlit.go.jp/webland/)を利用しましょう。国土交通省が運営しているサイトになっており、全国の売買実績を調べることができます。

販売額はどうやって決まる?

指標となる土地価格をベースに査定額を算出し、査定額をベースに販売額を決めます。
ここでは、実際に不動産会社が行う査定額や販売額の計算ではなく、一般の売主が行う方法を解説します。

(1)査定額を算出する

前述した固定資産評価額、路線価、公示価格、実勢価格を使用します。不動産会社であれば査定対象土地付近の謄本を調べることができるため、路線価や公示価格から平均値を算出することができますが、一般の売主では費用と工数がかかります。
そのため、固定資産評価額と公示価格から計算する方法が最も簡単です。

固定資産評価額の価格を0.7で割り公示価格にし、さらに1.2倍にすることで実勢価格を割り出します。
同じように、路線価においても0.8で割り1.2を掛け合わせて実勢価格を算出していくと、固定資産評価額との価格と少し差があることが分かります。
これは、固定資産評価額と路線価はそもそも使用目的が違うために起きる差です。

そこで、二つの実勢価格を足して2で割り、平均値を計算しましょう。
これが査定額になります。

具体例を挙げて計算してみましょう。
土地面積:50坪
固定資産評価額と780万円
路線価:900万円

固定資産評価額→実勢価格:780万円÷0.7×1.2=約1,337万円
固定資産評価額→実勢価格:900万円÷0.8×1.2=約1,350万円
査定額:(約1,337万円+約1,350万円)÷2=約1,343万円
坪単価:約1,343万円÷50坪=約27万円

このようにして、土地の査定額を求めることができます。

(2)販売価格を設定する

査定額を求めることができれば、実際に売買成立している実績データを土地情報総合システムで確認していきます。

査定額と実際に売買された金額を参考にし、販売額を設定することができます。
公示価格の約1.2倍程度になっているかどうかもチェックすることで、販売額の妥当性を確認することもできます。

このような方法で、机上での販売額については設定することができます。ただし、実際に販売する価格は土地と売主固有の要因を組み込む必要があります。
次章からは、販売額の影響要因について詳しく解説します。

販売額に影響する要因とは?

販売額の設定方法を解説しましたが、実際の実績を調べてみると査定額とかなり差がある事に気づかれる方もいらっしゃると思います。
実は地域によっては公示価格の1.2倍以上に高く売買されることがありますが、理由としてそもそも日本には家を建てることができる土地が少ないという要因が挙げられます。

日本の国土は約6割が森林となっており、4割の平坦な土地においても約6割が市街化調整区域という「家を建てることができないエリア」に指定されています。
つまり、国土全体において家を建てることができるエリアは1/5にも満たないということになります。そのため、地域によっては非常に高い取引価格で売買されており指標となる価格との差が大きくなっています。

また、土地や売主固有の要因が販売価格に影響することがあります。
それぞれどのような要件が販売額に影響するのかを解説します。

(1)土地固有の要因

全ての土地は世界に1つしかないため、所有している土地それぞれにプラスやマイナス要素があります。
販売額を設定するためには次に挙げる土地固有の要因を検討する必要があります。

①大きさ

人気の土地面積は、時代と共に変化しています。昔は大きな家に住むということが一種のステータスだったため、土地面積が大きい方が人気でした。
その後、核家族化によって車の必要台数が減少し、庭についても不要とする家族が増えることになりました。
その結果、45~50坪の土地面積が人気となっています。
都市部では30坪前後がトレンドという地域もあるため、所有している土地がエリアの人気面積に合っているかがポイントになるでしょう。

②土地の形

土地の形には整形地と非整形地の2種類があります。整形地とは正方形もしくは長方形の形状となる土地で、非整形地とはそれ以外の形状となる土地です。
一般的には整形地の方が非整形地よりも販売額を高く設定できる傾向にありますので、所有している土地の形状についてはしっかりと把握しておきましょう。

また、土地の高低差も重要です。敷地内に高低差がある場合は造成費用が発生する可能性がありますが、敷地外にガケや池などがある場合も買主は擁壁や壁を造成する必要があるため、費用負担を検討しなければなりません。
特に擁壁工事は数百万単位の費用が発生するため、買主が用意する資金が大きく増えることになります。そのため、ガケや池があり買主が擁壁を組む必要がある土地であれば、擁壁工事費用分を引いた販売額に設定するというのが一般的です。

③接道状況

「道路に接している長さ」「道路の幅」「接している道路の方角」「接している道路の数」これらの状況は、販売額に大きな影響を与えます。
道路に設定している長さで建てられる家のプランが変わることがあり、接する長さが2m以下であった場合はそもそも建築ができない土地となってしまいます。

また、道路の幅においても4m以下の場合は土地面積の一部を道路として利用するセットバックをする必要があり、その分有効宅地面積が減少します。
買主からするとその分割高に見える土地になってしまいますので、注意が必要です。

道路の方位と数は建物プランに影響します。特に南側と東側の2面に接している土地は非常に価値が高く、同じエリア内でも高い販売額を設定できる可能性があるでしょう。

④エリアと立地

人気のエリアが都心部だけとは限りません。郊外や再開発地区は非常に人気が高く、土地区画整理地の保留地においては抽選倍率が非常に高いです。
エリアの人気増減は様々な要因が重なることで起きていますが、最も影響のある要因は人口の増減だと言われています。

人口が増える町は人気の町となり、大型スーパーや病院が誘致されることになります。それにともないインフラが進み、さらに魅力的な町へと変化します。
一方、人口が減っていく町は人口流出に伴い需要が減ります。
再開発地区や土地区画整理地のように国や市が先にインフラを整える場合もありますが、殆どの場合は人口増加によって整備が進みます。

このように、販売額を設定する場合は町の人口がどのように推移していくのかを知っておくことが重要です。
人口推移についても各市町村のHPから確認できますので、必ずチェックするようにしましょう。

また、エリアと同じくらい重要視されるのが立地です。
駅までの距離が近い物件ほど、一般的には土地の価値は上がります。
また、郊外であれば高速道路インターに近いと販売額を高値に設定することも可能でしょう。
こういった要素は後から追加となる可能性が非常に低いため、大きなプラスポイントとなります。
一方、プラスポイント以外にも土地内で事件や事故、火災などがあればマイナスポイントとなり販売額に影響します。土地内でなかったとしても周辺で事件が多い場合は買主によっては懸念材料となってしまいます。
こういった心理的瑕疵は長年住んでいると薄れてしまうためあまり影響がないように感じてしまいますが、販売額に影響することもあります。

(2)売主固有の要因

不動産売買には「手に入れる時には夢があり、売る時にはドラマがある」という格言があり、土地を売却する際には売主によって様々な理由があります。
その中でも、売却して得たお金の利用目的が決まっている場合には、販売価格が高くなる傾向にあります。
具体的には、「売ったお金を贈与する」「財産分与する」「生活資金にする」「ローンが払えないから売る」といった理由の場合は相場以上の販売額になることが多く、査定額が参考に出来ないケースもあります。

売却益の利用目的がある場合は、必要な額+売却にかかる諸費用+税金の合計が販売額となり、査定額はあまり意味をなさないため注意が必要です。

売却にかかる諸費用は、主に次の通りです。売主によっては発生しない費用もあります。

  • 印紙代
  • 所有権移転登記費用
  • 抵当権抹消登記費用
  • 滅失登記費用
  • 相続登記費用
  • 贈与登記費用
  • 仲介手数料
  • 解体費用
  • 測量費用

査定額と実勢価格に差がない場合はそのまま販売額とし、査定額と実勢価格の差が大きい場合は実勢価格に近付けた販売額に設定しておきましょう。

売却益の利用目的があれば、必要な額から逆算して販売額とするのがおすすめです。

実際の相場はどうやって作り出される?

実際の相場は、どのようにしてできるのでしょうか。本来であればエリアや土地の形状によって査定額が決定され、査定額で売買されていく筈です。
しかし、実際には査定額よりも高い価格で売買されており、隣同士の土地であっても販売価格が違います。それでは、「土地価格相場」はどのように考えるべきでしょうか。

1つの結論として、「土地価格相場は販売額を決めるための参考価格」という考え方です。
余程の過疎地域でない限りは、建築可能な土地であれば多くの取引実績があり、査定額通りの金額もあれば非常に高い金額での取引がされている場合もあります。
特に都市部では受容に対し土地の供給が全く追いついていない状況となっており、坪50万円のエリアに80万円で公開したとしても売れるケースがあります。
そのため、売主固有の理由で相場よりも高く公開したとしても売却できる可能性が十分にあり、「土地を売却する場合は実勢価格より少し高めに出す」という鉄則が生まれつつあります。

つまり、実際の相場は各土地が各々の事情によって売却された結果が集約され作られるということになります。

そのため、実際に売却をする場合は査定額も実勢価格もあくまで参考として捉え、売主が売りたい価格で公開し反響数に応じて価格改定していくという販売方法がトレンドだと言えるでしょう。

まとめ

土地価格相場は実際に販売されている価格が集客され算出されますが、販売価格を考える上で参考とされるのが査定額です。

査定額は不動産会社だけでなく自分で計算する事ができ、指標となる固定資産評価額と路線価、公示価格、実勢価格をベースにして算出します。

土地の売却を検討する場合は、不動産会社に依頼する前にまず土地の査定額を自分で算出し、実際に売りたい価格のイメージを見据えるようにしましょう。

※記事中の法律や税率などについては、2022年6月時点のものです。

月間1万3千人突破!イエウール