不動産

相続した家を売却する方法とは?かかる税金や使うべき節税策を解説

相続した家を売却する方法とは?かかる税金や使うべき節税策を解説

相続に関する家庭裁判所への相談・調停の数が、ここ数年で急増しています。そのせいか、相続人に分割できない不動産は売却し「平等に分ける」のが、いま流なのかもしれません。

相続した家の売却には、専門知識の必要性や「手間」「手続き」が多くなる特徴があり、大きく分けて「速やかな相続登記」と「売却タイミング」の2つに十分な配慮が必要です。

本記事では、相続登記と家売却の流れを詳しくご紹介、加えて売却時の節税ポイントと業者選びの「コツ」を解説しています。

家を相続する5つの手順

相続した家を売却する具体的な手順について、まずは相続登記の流れをご紹介します。

相続する家の売却は、通常の不動産売却とは流れが大きく異なります。そのため、相続手順がスムーズになるよう事前に確認しておきましょう。

(1)相続人の確認

相続人の確認とは、遺産分割や遺産の登記を行う上で「誰が該当するのか」を、戸籍謄本などで調べて相続人を確定することです。

相続人が複数の場合、内緒で溺愛する孫と養子縁組していたケース、あろうことか被相続人に隠し子(認知した子)がいたケースなど、把握できない事例もままあります。

(2)遺言書の確認

次に行うべきことは遺言書があるかの確認です。遺言書があるかないかで相続の内容が、大きく変わりますので必ず行いましょう。

遺言書には「遺産の分割方法」「第三者への遺産相続を指定」「財産を残したくない人への権利廃止」など、大きな効力があるからです。

(3)遺産分割協議

遺産相続が発生したときは法定相続人の全員で遺産分割の協議を行い、誰がどの財産を譲り受けるか話し合い、書式(遺産分割協議書)で残す必要があります。

自分の親が亡くなった際の1次相続なら大抵の相続人は分かりますが、被相続人から見て孫が引き継ぐ代襲相続や2次相続の場合、見知らぬ相続人が判明するケースがあります。

万が一、その相続人を含めずに遺産分割協議を行うと、再協議しなければならず相続人同士でトラブルに発展する場合もあるので、先述した「相続人の確認」が重要なのです。

(4)借金が多い場合の相続放棄

遺産がプラスの財産よりマイナスの財産(借金)のほうが多い場合、相続放棄も選択肢の1つです。

マイナス財産を相続して返済することもできますが、それでは相続人の生活が困窮してしまうリスクを負ってしまいます。返済義務を避ける意味での、放棄が現実的と考えます。

ただし、放棄は相続の開始を知ったときから、3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があるのでご注意ください。

(5)相続登記の申請

相続登記とは、所有者の名義を被相続人から相続人に所有権を移転登記することです。不動産売却は基本的には、不動産の名義人しか行えない決まりがあります。

譲り受けた不動産を売却するには相続登記する必要があり、相続登記しないまま放置すると、相続人たちの共有財産と見なされ次のようなデメリットが発生します。

  • 売却できない
  • ほかの相続人が自分の持ち分を内緒で売却する恐れ
  • 相続人の死後、2次3次と相続人が増えて管理できない

こんな状態では不動産を有効に売却できなくなるので、不動産を譲り受けたら、まずは相続登記の手続きをしましょう。

相続以外の多い手続きも忘れず(役所・金融・年金関連)

死亡届のほかに、故人の役所・金融・年金関連の手続きも忘れずに行いましょう。

(1)役所関連

健康保険については「国民健康保険」、高齢だったなら「後期高齢者医療制度」に加入しているはずなので、亡くなった日から14日以内に管轄する役所に保険証を返納します。

故人が会社の社会保険に加入していた場合は、手続き方法を勤務先に照会してください。

(2)金融機関や年金関連

相続人全員が署名・押印した遺産分割協議書が成立したら、次に行うのが「預貯金」「有価証券」などの金融商品の解約と名義変更です。

故人と取引のあった「金融機関」「各種保険会社」「証券会社」などへ、取引の解約や名義変更の手続きを行います。

国民年金は亡くなった日から「14日以内」、厚生年金の場合は亡くなった日から「10日以内」に、年金事務所で年金受給停止の手続きが必要です。

相続・売却時にかかる税金

故人が資産家ではなくても不動産を受け継ぐと、都市部や好立地などでは、相続評価額が高額になり相続税が発生する場合があります。

さらに登記や売却にも課税されるので、急に多くの現金が必要になる場合もあるかもしれません。事前に「相続」「売却」にかかる税金を知っておきましょう。

(1)相続税

相続税は、預貯金や不動産など相続した財産の総額が、相続税の基礎控除を超える場合にのみ発生します。

基礎控除とは「3,000万円+600万円×法定相続人数」のように計算します。

相続税の納税は、被相続人が亡くなったと知った日の翌日から10ヶ月以内に行うと義務付けられています。

故人が住んでいた住所を所轄する税務署に申告し、相続税を金融機関で納付します。納付期限を過ぎると、期間に応じて延滞税が課せられてしまうのでご注意ください。

(2)登録免許税(名義変更)

登録免許税は、故人の不動産所有権を相続人へ名義変更する際にかかる税金です。相続する家や土地などの所有権の名義変更を「相続登記」と言います。

登録免許税の税率は登記の種類ごとに異なりますが、基本的には家と土地の場合には、双方に評価額(固定資産税評価額)の0.4%の税率がかかります。

(3)印紙税(売買契約書)

印紙税とは、契約書・領収書などに貼り消印して払う税金です。不動産を売却する際は、不動産取引時の売買契約書にかかります。

印紙税額は契約金額に応じて200円から60万円と細かく設定されています。仮に売買金額が3,000万円なら、令和4年3月31日まで半額の1万円に軽減されます。

(4)譲渡所得課税(譲渡所得にかかる所得税と住民税)

譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に課される所得税です。「譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)」の計算式で求めます。

譲渡所得税の税率は不動産の所有期間によって変わり、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2つがあります。

短期譲渡とは5年以下の所有期間での売却、所得税率は30%です。長期譲渡は5年以上の所有期間の売却、所得税率は半減の15%と低くなり有利です。

また、住民税の税率は譲渡所得税と同様に不動産の所有期間によって変わり、短期譲渡の税率は9%、長期譲渡の税率は5%と低くなります。

相続した家の売却までの流れ

相続手続きが完了すると、いよいよ家を売却する段取りに入ります。どのような流れで、手続きを進める必要があるのか確認しておきましょう。

(1)売却方法を決める

売却方法には、不動産会社による「買取」と「仲介」の2種類があります。

不動産会社に買い取ってもらう買取のメリットは、売却までの期間が短時間であり内密に売れる点です。

売却を急ぐなら、すぐに現金化できるため有効な手段になります。ただし、一般相場よりも売却価格が下がるという点が、買取のデメリットです。

一方、不動産会社を仲介した売却では、買主を探すことから売却完了まで、さまざまな手続きを一括で行ってくれます。

仲介なら、おおよそ相場価格に近い価格での売却に期待が持てるでしょう。仲介手数料の負担がデメリットですが、急がず少しでも高額で売却したい方におすすめです。

(2)不動産会社の選択

不動産会社は相続物件の査定から売却まで、売主をサポートする役割を担います。そのため、あなたの苦手な部分をフォローし、希望を叶えてくれる業者を選ぶことが重要です。

まずは、近くの不動産会社に直接出向いたりネット検索したりしますが、ネットで一度に複数社の査定を無料で受けられる「不動産一括査定サイト」の利用をおすすめします。

複数社に査定を依頼することで、適切で良心的な不動産会社に巡り合える可能性が高まり、登録している不動産会社も、管理者により厳選されたことが多く安心して利用できます。

サイトで候補となる不動産業者が何社かに絞れたら、その中で本当に信頼できる業者を選ぶために、どうしてその査定額になったのかしっかりした根拠を聞き出してください。

(3)媒介契約して販売活動を開始

信頼できそうな不動産会社を見つけたら、売却へ向けた「媒介契約」を不動産会社と結びます。媒介契約には次の3種類があり、それぞれについてご説明します。

  • 専属専任媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 一般媒介契約

専属専任媒介契約は、不動産会社1社だけに仲介を依頼する媒介契約、ほかの不動産会社に仲介を依頼できません。

専任媒介契約も同じですが、ご自分で買主を探すことができる点に違いがあります。

一般媒介契約とは、同じ時期に複数の不動産会社に仲介を依頼することが可能で、ご自分で探した買主と個人間での売買契約も結べます。

ご自分に合う媒介契約を結んでから、それぞれのやり方で売却活動がスタートします。

(4)売買契約を締結し引き渡しする

買主と売買条件で合意できたら、売買契約を交わして手付金を受け取り、残金は引き渡し時に受領します。

売買契約時には買主と売主、仲介する不動産会社が参加する必要があります。

引き渡しの時期については、売買契約の締結時に決めるのが一般的ですが、基本的には残金決済と同時に引き渡しするのがよいでしょう。

相続した家を売る時の節税ポイント

相続した家を売却した際、売却益が出ると税金が発生すると先述しました。売買金額が大きい分、結構な額の税金となるため節税のポイントも知っておきましょう。

利用できる節税策には、それぞれ適用期限があるので、期限が来る前にきちんと手続きをすることが大切です。

利用できる可能性がある節税方法は次の3つです。ご自分のケースが、どれに当てはまるかどうか確認してみてください。

(1)取得費加算の特例と3,000万円特別控除

取得費加算の特例を利用すると、相続後3年10ヶ月以内に相続財産の売却を条件に、相続税額の一部を取得費に加算できて、譲渡所得を軽減できます。

3,000万円特別控除とは、売却価格から購入価格を差し引いた「課税譲渡所得」から最高で3,000万円まで引ける控除で、所有期間に関係なく適用されます。

(2)10年超所有軽減税率の特例

10年超所有軽減税率の特例に該当すれば、譲渡所得税の税率が軽減されます。10年を超えて所有している不動産を売却して、利益が出た場合に利用できる特例です。

売却後の課税譲渡所得が「6,000万円以下」の部分については、税率が14.21%まで軽減されます。

(3)特定居住用財産の買い替え特例

特定居住用財産の買い替え特例は、相続した家が現在の居住用財産であり、それを売却して新居を購入した際に、新居の購入費のほうが高い場合は非課税になる制度です。

相続した居住用財産(家)を売却してから、住み替えの計画を立てている場合は、とてもお得な制度ですので利用を検討しましょう。

(4)取得費が分からないとき

相続した家の「取得費が分からない」、そんな声を多く耳にします。先祖伝来の家であったり、購入した時期が古く関係書類が無かったりする場合です。

その場合は、売却金額の5%相当額を取得費とすることができます。

また、実際の取得費が売却金額の5%相当額を下回る場合も、売った金額の5%相当額を取得費として計上できます。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm

相続した家を売るには手間がかかる

相続した家の売却は、もともと自己所有していた家の売却よりも、手間や専門知識に基づく手続きが多くなるのが特徴です。

それは相続人が多ければ多いほど手続きが煩雑になり、場合によっては揉め事に発展したり、時間が経過することによる損失を招いたりします。

そのため、信頼できる不動産会社に相談すれば、相続から売却まで一任できて早めの対策を取れるので、相続した家の売却には早い段階での業者選びをおすすめします。

(1)相続物件を放置するリスク

相続した実家が一戸建ての場合、手入れなど管理を怠り空家のまま放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

訪れるリスクは次の通りです。

  • 構造体の老朽化による倒壊が心配
  • ゴミの不法投棄による衛生面が悪化する
  • 不法侵入など犯罪の温床化を誘発する
  • 地域の景観の悪化を招く

こんな状態になると、近隣の人たちに迷惑がかかるのは必然です。

さらに「空家等対策の推進に関する特別措置法」で特定空家に指定されてしまうと、相続した土地の固定資産税が6倍も高くなってしまいます。

参考:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001385948.pdf

また、たとえ相続を放棄しても、その物件が名義変更されるまでは、放棄人に物件の管理責任が残るケースがあります。

そうなると、遠方地でもどこでも、物件の草刈りや清掃に出向かねばならない管理リスクが生じるでしょう。

参照:https://www.mhmjapan.com/content/files/00048247/1-4.pdf

(2)士業(弁護士や司法書士)と連携した不動産会社を選ぶ

不動産の売却は、宅建業法や関連する税金がたくさん絡みます。特に、相続不動産においては相続人全員の合意形成や相続税の問題もあり、その内容も複雑化します。

仕業(弁護士や司法書士)と連携した不動産会社なら専門的な知見から、難度が高まる相続不動産の売却に関しても、適切なアドバイスを受けられます。

例えば、子は全員が実家を離れて独立しているので誰も住む予定がない、ましてや実家は遠方なので空家を管理することも難しい。家は均等に分けられないので「現金化して兄弟間で分けたい」、「古くて借り手がいない」など、相続した不動産を売却したい理由はさまざまです。

相続から売却までには、煩雑な手続きや手間がかかり、相続人同士のトラブルが起きやすいという傾向もあるので、プロの不動産会社に相談されることをおすすめします。

まとめ

実家など相続した不動産には売却以外にも、自分で住んだり賃貸に出したりと、さまざまな活用方法があります。活用方法の選択は、個別の事情で変わるでしょう。

もし売却を選択するなら、早めに行動することが重要です。相続した不動産売却の節税に利用できる特例には、期限があることを頭に入れておいてください。

不動産は売却したくても、こちらが望む条件や期間で売れないことも多くあります。そのため、特例を使えるチャンスを逃さないためにも、早めに専門家に相談しましょう。

※記事中の法律や税率などについては、2022年3月時点のものです。

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